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岡崎京子ファンサイト「BIG BOREDOM in WWW」のイケダのブログ。

少年ナイフ

11月も半ばを過ぎてからの、これは恋かと思うほどの今年一番の熱。ごく私的な記憶と納得のまとめです。


少年ナイフ」というバンド名を最初に認知したのは、多分雑誌DOLL辺りの自主制作盤のジャケットがずらっと並んでる感じのレコードショップの広告で「Burning Farm」や「山のアッちゃん」が含まれてたのでだと思う。「山のアッちゃん」という語感やその素朴感のするジャケットワーク(広告ではモノクロでしたが)から、妙に印象に残りました。時期的には、ラフィンノーズ、ウィラード、有頂天などが盛り上がった、いわゆるインディーズブームの頃か。たぶんハードコア全盛の頃で、アンダーグラウンドで暴力的なイメージがセットでもあったインディペンデントレコードのリストにおいて、すごく異彩な感じでした。ただ情報がないだけに実際耳にするのはもうちょっと先になります。水玉消防団とかノンバンドとかも並んでましたね。他、ゼルダのサヨコとチホの招き猫カゲキ団なんかもジャケットが秀逸でした(これは買った)。


ちょうど「Let's Knife」の頃と思いますが、知人からの情報だったか「ソニックユース少年ナイフを気に入ってる」というのを聞いて、聴いてみようという気になったんじゃないか、と記憶します。フールズメイト辺りで、変名バンド・Ciccone Youthでマドンナのカバーをリリースというところから興味を持って、ソニック・ユースを聴くようになってました。カバーモノが好きなんです。話がそれますが、Pop Will Eat ItselfSigue Sigue Sputnikのカバーをしているというのが興味を持つキッカケでした。大体同じくらいの時期だったかと。


で、MCAからの「Let's Knife」を聴き、徳間からリリースされたインディーズ音源を聴き、「Rock Animals」を聴きます。メジャーリリースでの全くの新作という点では、「Rock Animals」が最初のアルバムということになるんでしょうか。「Rock Animals」では曲のクオリティが一気にレベルアップした印象を受けました。もうOLを辞めて、音楽専業になってたと思われるので、その辺りも影響してるのかもしれません。


で、時々思い出しては、手持ちの音源を聴いたりはしていましたが、ここで一度新譜を聴くというのが無くなります。ネットのどこかで読んだ程度の知識ですが、事務所とのゴタゴタ?もあいまって、いわゆる全くの新譜のリリースは96年の「Brand New Knife」まで空くんですね。


先月くらいか、たまたまLast.FMで「Top Of The World」がフル試聴できるのに気付いて、ずっと聴いてたら、もっと聴きたい欲がフツフツと沸いてきました。あるいは毎日通勤時に御堂筋線のチャイムを聞いているせいだったかも知れません。「Brand New Knife」以降を追っかける流れと「Let's Knife」以前を遡る流れで並行して、CDハントが始まりました。


さすがに短期間でまとめて聴くと、個々のアルバムの差異というか、各曲の作られた時期というか、どの曲がどのアルバム、とか認識があいまいです。逆に言えば、各アルバム時期によってのメンバーの変動も、楽曲のバラエティの振れ幅に含まれる、というか。それでもやはりソングライター/ヴォーカリストの1人を失ったのは大きいし、何より出音に大きな変化は感じました。


オリジナル少年ナイフの特徴って、下手さというよりも(その事実も否めないですが)、アンサンブルの独特さにあった気がします。ギター・ベース・ドラムが各々楽曲をリードするようなフレーズで、ものすごい緊張感がある。ロックイディオムに頼ってないというか、知らないというか。で、そういうある種のバラバラさで進行しているからこそ、カッパ・エキスのエンディングの3連のユニゾンインパクトがあるんだろうな、とか。特にみちえさんのベースはいわゆるロックな8分弾きが極端に少なかったですよね。彼女の脱退により、独特のアンサンブルは失われてしまったけれど、その分ロックのグルーヴを手に入れた様に感じました。みちえさん脱退に際し、あつこさんのベースへのコンバートもライブを前提にしたものでしょうし、後のメンバーの拡充もライブを継続すること、グルーヴを獲得・維持することが最優先だったと思います。それは、少年ナイフにとってライブが第一義という点で。


みちえさん脱退後の「Strawberry Sound」が、打ち込みやホーンも導入しての音作りに賛否両論だったっぽいですが、むしろ初期の何でもアリ感っぽくて、案外違和感は感じませんでした。むしろ「Candy Rock」の「マスコミュニケーション ブレイクダウン」なんかがあまりにも詞も曲もストレートというかシリアスというか、少年ナイフらしくなさを感じてちょっと不安に思いました。同様のシリアスさは「fun! fun! fun!」の「みなみのしま」なんかにも感じるんですが、「みなみのしま」では不安感には繋がらなかったですね。1曲目の印象って大きいな。そもそもシリアスさの対象が違いますけど。


今の楽曲と音には英語詞の方がしっくり来ているように思います。とは言うものの、初聴の印象によるのかもしれないし…。「ラバーバンド」は英語詞を先に聴きましたが、日本語詞のがいい。E.S.P.も英語詞を先に聴いていて、逆に日本語詞はちょっと違和感が残りました。もともと作られた際のオリジナルの歌詞がハマるということなのかもしれませんが、「Watchin' Girl」なんかはもともと日本語詞だったとおもうんですが、英語詞の「Hey, Now!」の部分に非常にロックな部分を感じたりしたし、結局のところよく分かりません。


蛇足ですが、ロックな部分といえば、「Top Of The World」のコーダ部分、「I'm on the top now, I'm on the top now」の後の「Yeah」のフラットな感じもロックだなー、と感じました。その辺りで「少年ナイフはロックの秘密を知っている」なんてキーワードでまとめようと思ったりしたんですが、私がロックの秘密を知らないので諦めました。でもちょっといいフレーズですよね?自画自賛です。


実際に足を運んで、この目と耳と体で体験してるわけではなくて、YouTubeにあがってるフェスの様子や、Live In Osakaなどの音源からの印象ですが、ライブが楽しそうで、でもなによりもライブで一番楽しんでいるのはメンバーだ、と思いました。なんていうんだろう。ズルい!とうらやましくなるほどに。


本人たち(と関係者)には大変な部分もあると思うけれど、自分たちで原盤権を持ち(今そうですよね?たぶん)、流通(という言い方はちょっと違うけど)もコントロールできるのはものすごく恵まれた環境な気がします。MCA時代はちょっと無理してたんではないかなー、と勝手に想像したりします。「海外で最も著名な日本人バンド」もさることながら、「日本で最も成功しているインディ・バンド」というのもアリな気がします。


最近再びパーマネントな3人編成となった少年ナイフには、若いメンバー、えつこさん・りつこさんの曲作りへの貢献を期待したいです。既存の少年ナイフのイメージにおもねるようなあざといものではなく、結果として「らしいな」と思えるような曲を。ひとりになる可能性もありつつも、今3人の編成になって続けていくのは、なおこさん=少年ナイフではないということだろうし、それはパフォーマンスやグルーヴの面だけでなく、実際の曲作りそのものかは別としても、何かしらの作用を期待してのことだと思うので。成長とか、変化とか?


あとは、全曲新曲のニューアルバムがライブアルバムっていうのも聴いてみたい。