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岡崎京子ファンサイト「BIG BOREDOM in WWW」のイケダのブログ。

感想・三原ミツカズ「ハッピーファミリー」上下
まず。
まず面白かった。それは確かなこととして。


読後の印象というか、読中に感じたのは楠本まきの「KISSxxxx」に似た感触。それは閉じた世界の天国的なお話という点で。あとは作者の好みが分かりやすく反映された世界設定と登場人物たち、か。
「KISSxxxx」が徹頭徹尾、好ましいものに囲まれ、幸福感に終始したのに対し、「ハッピーファミリー」は後半、主人公なるとが中学生になることを転機にやや変化が訪れる。強引にでも世界を動かすことで、主題である「幸せな家族」の解答は得られるのだけれど、淡々と日常を積み重ねることで提示するだけでも美しく完結したのではないかしら?という気はしなくもない。いや、それだとむしろ完結させるタイミングを失ってしまうのか…。


後半「エクストラ」として、なるとの父母・うずし夫とまゆらとケーキ職人岡内を絡めた三角関係の、出会いや結婚前までのエピソードも語られているのだが、これもまた「結果の出ていること」なので、過剰にハラハラすることなく、幸福感のある感触。


三原ミツカズ作品に多く目を通しているわけではないのだけど、シリアスに傾くよりも、こうしたものの方が楽しく読める。ややロマンチックに過ぎるきらいがあるので、適度なコミカルさはそのナルシスティックな印象を中和してくれるのかもしれません。というわけで、「HAUNTED HOUSE」も読んでみよう、と思いました。