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岡崎京子ファンサイト「BIG BOREDOM in WWW」のイケダのブログ。

嫌われ松子の一生

原作を読まずに、何度か見かけたテレビなどでのプロモート活動(「王様のブランチ」とか「TVブロス」の特集とか)程度の予備知識で観た感想です。お正月に観た「THE 有頂天ホテル」以来の映画ですから、その程度の観客の勝手な感想ですから、ええと、個人的な感想です、ということです。


70点。


130分、2時間超を退屈することなく観ていられたので、それだけで「十分面白かったのでは?」と思います。思いますが、観終わってから、なんて言うかそれこそ「なんでー?」と思わなくもない個所が2個3個…。点数であらわすならば、70点程度?と思いました。


以下、箇条書き気味に細かいことをつらつらと。エバー書きかけってことでひとつ。


リニアに撮って行ったのか、あるいは、リニアに脚本が出来上がっていったのか、一つの映画の中で表現のブーム的なものが推移して、ゆえにいささか散漫な印象を感じました。オンタイムで長いスパンの曲のリミックスを行っていて、フレーズやギミックも一期一会な一過性なもの、というか、サンプリングメモリが一つしかなくて、新しいネタが入ったら前のは使えなくなっちゃう、というか…。


「転落」とは言うものの、どんどん堕ちていくのではなく、踏み外した下の次元でグルグル回ってる様に感じた。それは、大きなイベントが概ね出所前に固まっているせいか。


松子と周囲の人間関係においてキッカケや過程が省かれていて(「ことごとく省かれているなー」と今思ったので、確信犯的に意図的になのだろう)、結果から推し量るしかなく不親切に感じた。


セックスシーンが単調。セックスも含めて「ダメな男」が画一的に感じた。


ミュージカルというほどミュージカルに感じなかった。音楽を主役に据えるにはいささか「ドラマ」がいささかジャマに感じました。


出所して理髪店のかつての恋人の新しい暮らしを目の当たりにする直前の満開の桜に前にたたずむ中谷美紀は一番美しい。


時々濱田マリに見える中谷美紀、50代まではちょっとムリがあった感じがします。正直、かつての教え子・龍洋一(伊勢谷友介)との再会以降は年齢不詳です。


龍の出所を出迎えて、雪の中殴られて鼻血を垂らす中谷美紀も美しかった。


鬱と診断された松子が自室の壁に書きなぐった「生れてすみません」は初めての同棲相手・八女川(宮藤官九郎)の最後の言葉でもあったわけで、その割には八女川との関係が重要であったようには描かれていない様に感じた。


夜遊びする中学生に殺されるシーンは蛇足かなー、と思いました。「誰に殺されたか」は重要なテーマではない。
あるいは。
転落前の松子が教師であったこと、ふたたび生きる目的をもった松子が中学生(現実世界)と接触を試みたということとの対比として見たとしても、甥が松子像を追うという視点からみれば「どんな最後であったか」は瑣末な気がしてならない。


テレビ(番組)がモチーフとして使われているものの、世相を映し年代を明示するに留まって、今ひとつ活かしきれていないように感じた。終盤、光GENJI(内海光司)とコミットする点で同時代的に機能するのだけれど、デスコミョニケーションなので…。テレビというメディアが「一方的なもの」というアイロニーなのかなー。


父との関係においては日常生活の積み重ねが描かれておらず「タコ顔」のトラウマになるほどのエクスキューズが弱く感じ、そして旅館の一件以降活かされていない。妹との関係の描写も少なくモノローグで語られる程度で、ラストとの対比が弱く感じた。


画角は映画館のスクリーンを意識したもので、テレビでは味わえない、大きなスクリーンでこその味わいがある、と感じました


ダーク・ハッピーマニア?ダークでもないか。可能性というか、ケースとして。